
ここからのテーマは、デジタル戦略を考えるうえで、昨今のデジタル市場について確認してみたいと思います。
中小企業・小規模事業者の動向
中小企業の業況判断DIは、2020年4-6月期にリーマンショック時を下回る水準まで急激に悪化。
足下では、持ち直しの動きも見られるが、依然として厳しい状況。
中小企業の人手不足感は、感染症流行の影響により一時的に弱まったものの、依然として人手不足の状況が見られる。

資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」

Sauce:資料:中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」 (注)従業員数過不足数DIとは、従業員の今期の状況について、「過剰」と答えた企業の割合(%)から、 「不足」と答えた企業の割合(%)を引いたもの。
企業の成長を促す経営力と組織(無形資産投資に着目した背景)
企業の成長(付加価値向上)を促す方法として、労働力の確保や有形資産投資の増加も挙げられるが、
人的資本・研究開発・IT資本等への投資をはじめとする無形資産投資の増加も成長を促す方法の一つ。

Sauce:OECD報告書 「New Sources of Growth: Knowledge-Based Capital」
(注)グラフは、複数のOECD諸国について、労働生産性の上昇率に対する無形資産投資と有形資産投資の寄与度を算出した上で、それぞれの寄与度と全要素生産性の上昇率の相関を取ったもの。
共通基盤としてのデジタル化
感染症の流行前後で、デジタル化により業務効率化などに取り組む事業者(段階3)は増加している。
一方で、依然として紙や口頭による業務が中心の事業者(段階1)が一部存在するとともに、デジタル化によるビジネスモデルの変革など、DXに取り組めている事業者(段階4)も約1割にとどまる。

Sauce:(株)東京商工リサーチ「中小企業のデジタル化と情報資産の活用に関するアンケート」(2021年12月)

Sauce:(株)東京商工リサーチ「中小企業のデジタル化と情報資産の活用に関するアンケート」(2021年12月)
取組段階が進展するにつれて、営業力・販売力の維持・強化をはじめとする個々の効果を実感する事業者の割合は高くなる。 引き続き、デジタル化の進展に取り組み、最終的には新たなビジネスモデルの確立につながる段階への到達を目指すことが重要。
国内IT市場予測、2022年は4.5%増の20兆962億円

Sauce:ZDNet Japan「国内IT市場予測、2022年は4.5%増の20兆962億円」
IDC Japanは5月18日、2022年3月末時点の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と
ロシア・ウクライナ戦争による影響を考慮した国内IT市場予測を発表した。
これによると、2021年は前年比5.0%増の19兆2363億円、2022年は同4.5%増の20兆962億円と予測している。
大企業や中堅企業といった経営体力のある企業では、ITによる事業拡大に向けた取り組みを継続しておりプラス成長を予測。
一方、経営体力に乏しい小規模企業以下、特に小企業では、業績の低迷が長期化し事業継続が難しい状況に追い込まれる企業も増えており、2022年のIT支出はマイナス成長を見込んでいる。
企業の成長を促す経営力と組織

Sauce:(株)東京商工リサーチ「中小企業の経営理念・経営戦略に関するアンケート」 (2021年12月)
(注)1.ここでのブランドとは、「顧客に認識される、企業や商品・サービスなどのイメージの総体」を指す。
2.企業のブランドが取引価格の引上げ・維持に寄与しているかを聞いたもの。

Sauce:(株)東京商工リサーチ「中小企業の経営理念・経営戦略に関するアンケート」 (2021年12月)
(注)1. ブランドの維持・構築のための取組の有無について、「取り組んでいる」と回答した企業に聞いたもの。
2.複数回答のため、合計は必ずしも100%にならない。
無形資産投資の一つであるブランド構築は、オリジナルの付加価値を有し、適正価格を付けられる価格決定力を持つことが考えられる。
ブランドの構築・維持を図る取組を行っている企業は、自社ブランドが取引価格へ寄与している割合が高い。
ブランドの構築・維持のための取り組みとしては、自社のブランドの発信だけでなく、ブランドコンセプトの明確化や従業員への浸透などを行うことも必要。
小規模事業者における現下の事業見直し

Sauce:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「小規模事業者の地域での連携や課題解決への取組に関する調査」(2021年12月)
小規模事業者は、事業見直しに取り組むにあたって、知識・ノウハウの不足や販売先の開拓・確保、資金調達、
人材の確保といった課題に直面している。
Sauce:三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)「小規模事業者の地域での連携や課題解決への取組に関する調査」(2021年12月)
考察のまとめ
国内IT市場も拡大している中で、デジタル化により業務効率化などに取り組む事業者は増加。
取り組めば、営業力・販売力の維持・強化をはじめとする個々の効果を実感できる。
それなのに、経営体力に乏しい小規模企業以下、特に小企業ではデジタル化を実施しないと予想されている。
なぜか?
その理由は、「知識・ノウハウの不足」「自己資金の不足」が原因である。
つまり、これからの中小企業のDX化、デジタル化を推進する上で、専門家がもっと中小企業に対し、知識やノウハウを提供していくこと、そして自己資金不足を補う上で、より具体的に経営に寄り添う必要性があると考えています。そこを担うのは今後中小企業診断士だという風に考えています。
当社では、こうしたデジタル化・DX化の専門性に特化しながら、経営に寄り添える専門性が必要だと考えています。