「戦略」「作戦」「戦術」の違いを国語辞典で確認
まず、戦略、作戦、戦術を、国語辞典で調べると、以下のように出てきます。(※出典:『明鏡国語辞典』)

戦略/STRATEGY

作戦/TACTICS

戦術/OPERATIONS
では、企業レベルにおける「戦略」「作戦」「戦術」に置き換えると、どうなるでしょうか?
戦略・作戦・戦術を企業経営に置き換えると?

ここまで、戦略・作戦・戦術の辞書的な定義を確認しました。
では──それぞれの概念を、企業経営やブランドづくりにどう結びつければよいのでしょうか?
私たちは、企業の志を言語化するフレームとして、PVMV(Purpose・Vision・Mission・Value)を紹介してきました。
この中で、Mission(使命)とValue(行動指針)の間にある“実行フェーズ「STRATEGY / PLAN(戦略・実行計画)」”こそが、「戦略・作戦・戦術」にあたる部分です。
つまり、PVMVが“なぜその事業を行うのか”という存在意義や理想像(WHY / WHAT)を示すものだとすれば、
戦略・作戦・戦術は、“どう実現するか”(HOW)を構造化するステップだといえます。
PVMVと事業計画の関係性
私たちは、企業のMissionを「果たすべき使命」と定義しています。
しかし、この使命を現場で実行可能なものとし、Valueとしての行動へとつなぐには、「Strategy / Plan(事業戦略・実行計画)」が欠かせません。
項目 | 意味 |
---|---|
Mission | 果たすべき使命(社会に対しての責任) |
Strategy / Plan | 使命を現場で実現するための事業戦略・実行計画 |
Value | 実行計画に基づく、日々の行動のあり方・判断軸 |
どれほど崇高な理念を掲げても、それが日々の業務や現場の行動に落とし込まれていなければ、ブランドは形になりません。
そこで必要となるのが、「事業計画」というレイヤーです。
目的達成のための4階層構造
PVMVのMissionを、現場で機能させるためには──
「理念 → 戦略 → 作戦 → 戦術 → 行動」という、段階的な構造が必要です。
私たちは以下のような4階層構造で、ブランドを“現場で再生可能な戦略”へと翻訳しています。
- Goal(目標): どんな成果を、いつまでに達成するか
- Strategy(戦略): どの道筋で勝ちにいくのか
- Tactics(作戦): どんな手段や仕掛けを用いるか
- Operations(戦術): 具体的に誰が、何を、いつ、どう実行するのか

このように、戦略・作戦・戦術は、理念を現場に届けるための“構造”です。
そしてその構造こそが、ブランドを「言葉」から「体験」に変えていくプロセスなのです。
4つの視点で立体的に考える
「どう勝つか」だけでなく、
「なぜ選ばれるか」を言語化・体現するのがブランド戦略
当社では、戦略・作戦・戦術を考えるうえで、バランススコアカード(BSC)の4視点を活用しています。
視点 | 考える内容 |
---|---|
財務の視点 | 収益性・投資効率・資本の健全性 |
顧客の視点 | 顧客のニーズ・満足度・ブランド体験 |
業務の視点 | プロセスの効率性・品質・イノベーション |
人財の視点 | 組織文化・スキル・モチベーション |
戦略=この4つの視点を軸に「どう勝つか」を決めること。
ここで重要なのが、ブランド戦略は「なぜ選ばれるか」まで設計するものだということ。
事業戦略は「どう勝つか」を考える戦いの地図。
ブランド戦略は、それに「共感され、信頼される理由」を持たせるものです。
つまり、私たちはこう捉えています。
ブランド戦略とは、事業戦略に“意味”と“物語”を与える思想設計である。
4つの視点は“逆ピラミッド”で捉える

多くの企業が戦略を考えるとき、「売上や利益などの財務目標」を起点に置いてしまいがちです。
しかし、私たちはこう考えます。
戦略は、数字(Goal)から逆算するのではなく、Purpose(志)から積み上げるもの。
この考え方は、私たちが提唱する「パーパス経営」に通じます。
財務は“結果”であり、“出発点”ではありません。
私たちが活用しているBSC(バランススコアカード)の4つの視点も、本来は以下のような因果関係で構成されています。
- 人財の視点(学習と成長)
社員のスキル、価値観、意欲が育まれることで── - 業務の視点(プロセスの革新)
効率的で創造的な業務が実現され── - 顧客の視点(価値提供)
顧客に対して、独自の価値を届けることができ── - 財務の視点(成果)
結果として、収益や成長といった財務的成果がもたらされる
この4つの視点は、「財務から逆算する思考」ではなく、人から始まり、社会価値を生み出すことで結果がついてくる“Purpose起点”の思考です。
私たちは、「Purpose → Vision → Mission」という企業の志を、この4つの視点を通じて戦略・作戦・戦術へ翻訳していきます。
つまり、ブランドとは、社会的意義から始まり、現場の行動にまで一貫性をもって設計される“志の実装プロセス”なのです。
「作戦」と「戦術」の違い
「戦略」が方向性であるならば、「作戦」や「戦術」はその“実行計画”です。
- 作戦(Tactics):
部門やチームごとに立てられる中期的な取り組み方針。
戦略をどのようなストーリーに分解し、どう展開していくかという“演出プラン”にあたります。 - 戦術(Operations):
日々の具体的な行動、施策、オペレーション。
接客の一言、営業資料の言い回し、Web上の導線──そのすべてがブランド体験を形づくる“現場の演出”です。
ブランドを「志の体現」とするならば、この現場レベルでの一貫性こそが、ブランドを“実在させる”鍵です。
項目 | 意味 | 対象 | 時間軸 |
---|---|---|---|
作戦(Tactics) | 戦略を現場に翻訳した中期的な取り組み方針 | 部門・プロジェクト | 数ヶ月〜1年程度 |
戦術(Operations) | 作戦を支える具体的な行動や業務オペレーション | 個人・チームの日常業務 | 毎日〜週単位 |
ブランド文脈での戦略とは?

ここで改めて問いましょう。
ブランドとは、企業の志に共感してもらい、選ばれる理由をつくること。
そのためには、“志→計画→実行”のすべてにおいて、一貫性と物語性が必要です。
つまり──
ブランドとは、“語ること”ではなく、“実行の一貫性”で築かれるもの。
戦略・作戦・戦術は、志を現実にする「物語の脚本」であり、「日々の演出」なのです。
結論
PVMVが“志”を言語化するOSであるならば、
戦略・作戦・戦術は、それを「現場で再生するプレイヤーの台本」です。
“何を目指すのか”だけでなく、
“どうやってそれを実現するのか”があるからこそ、
ブランドは社内で信じられ、社外から信じてもらえるのです。
次回は、戦略・作戦・戦術を、いかに運用・検証し、改善していくか?
いよいよ、実行フェーズのマネジメント手法について掘り下げていきます。
※関連記事:
「No.1 ブランディング=経営」
「No.2 CI=ブランドを“つなぐ言語”」
「No.3 PVMV = 理念設計のフレームワーク」
「No.4 ブランド戦略と事業戦略」