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DX講座

Vol.02

Vol.02 / 事業承継×DX

未来を見据えた
事業承継戦略

中小企業診断士
千田 哲也

株式会社オルガナ
代表取締役

1.事業承継と"見えない資産"の重要性

 「大事に育てた会社を後継者へ引き継ぎたい」「代々受け継がれたこの会社を息子や娘に譲りたい」という願いは、多くの中小企業経営者に共通する思いです。しかし、経営者の高齢化が進む中、後継者が不在の企業も多く、事業承継問題が深刻化しています。中小企業庁の試算によれば、事業承継問題が解決できなければ、廃業などの増加によって、「2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用と約22兆円の国内総生産(GDP)を失う可能性がある」としています。

 また、親族など後継者がいる場合でも、事業承継の開始から完了までに約10年を要することが多く、若手の経営者であっても他人事ではありません。この10年の間で、経営体制の整備や、後継者の育成、株式・財産の分配など様々なことを進めていく必要があります。その中でも特に重要視すべきは「後継者の育成」です。経営者や組織の中核を担う人物が築き上げた"経験や専門知識"――これら"見えない資産"の承継が、事業承継の成功を左右するのです。

2.事業承継におけるDXの役割と重要性

 "見えない資産"の承継は複雑で時間を要し、重要性が高いと言えます。創業者は自らの手で会社を築き上げ、その細部に至るまで深く理解していますが、後継者が同じレベルで会社を理解し運営することは容易ではありません。ここでDXの推進が重要な役割を果たします。

 事業承継を円滑に進めるためには、DXを積極的に取り入れ、業務プロセスを明確化し、会社の実態やビジネスの要点をデータで可視化することが求められます。名刺管理から顧客管理、会計管理に至るまで、日常業務のデジタル化を進めることで、後継者が引き継ぎにくい情報資産も形式化しやすくなります。このようなプロセスは、後継者にとって貴重な学習機会となり、事業への深い理解を促進します。

 DXによる事業承継は、単に経営権を承継すること以上の意味を持ちます。それは、次世代のリーダーが企業の本質を理解し、将来にわたって持続可能な成長を実現するための基盤を築くことに他なりません。

3.後継者をDXプロジェクトの中心に

 DX推進には後継者をDXのプロジェクトリーダーとして指名してはいかがでしょうか。DXを推進することで、既存の業務への理解が深まるだけでなく、非効率な作業があぶりだされ、業務改善や新規事業の創出など経営革新につながるケースもあります。また、DX推進の過程では、関係部門や従業員との密接な協力が必要となります。この時スタッフとのコミュニケーションが生まれ良好な関係性を築くことが期待できます。

 人材不足が課題となる中、デジタルネイティブな若手を引き付けるためにも、DXは中小企業にとって重要な戦略です。事業承継を検討する経営者は、DXについての知識を深め、その重要性を理解することから始めるべきです。DXの推進を支援するコンサルティングサービスも利用可能ですので、積極的に活用し、事業の持続可能な成長と成功のための基盤を築いてください。

経営やDXの課題解決に向けて、
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